今年の仕事初めは元日から始まった。中村佳穂ちゃんの生配信番組にトークゲストとして急遽出演することに。
各所で語っているが、僕が京都精華大学ポピュラーカルチャー学部特任教授に就任した2012年、彼女は人文学部の2年生だった。ひょんなことから知り合って演奏を聴いた瞬間、凡百の学生とは違う只者ではない才気を感じた。以来、佳穂ちゃんは僕やスチャダラBoseくんの授業にモグリで参加して誰よりも気合の入った課題を提出したり、彼女が企画した学内の投げ銭ライブにゲストで出て5回程共演したりした。そのあたりのことはここに詳しい(*有料記事です)。
在学中に400本のライブを行ったという (!) 佳穂ちゃんはその後、全国で知り合ったミュージシャンたちと中村佳穂バンドを結成。2年ほどかけて作り上げたアルバム「AINOU」2018年にリリース、音楽通のリスナーや著名ミュージシャンからも絶賛される。大学時代の「弾き語りの才女」のイメージにサウンドデザインとグルーヴが加わった新境地には、僕も驚かされた。
佳穂バンドのライブ動員も着実に増えて、これからさらにジャンプ、というタイミングで、世はコロナ禍になってしまう。元々ステージで本領を発揮する佳穂ちゃんにとって、ライブのできない日々は辛かったと思う。情報もほとんどなく1年ほどが過ぎた頃、驚きのニュースが飛び込んできた。2021年公開の細田守監督の新作「龍とそばかすの姫」で主演声優をつとめ、「millenium parade ✕ Belle(中村佳穂)」名義でメインテーマも歌うらしい!この展開には、本当に意表を突かれた。「坂本龍一のサウンドストリート」の常連だったテイ・トウワ君がDeee Liteでデビューしたとき以来の衝撃(YMOチルドレンにしかわからない比喩で失礼)。映画はカンヌ映画祭でも15分のスタンディングオベーションで絶賛される。そして2021年の紅白歌合戦現場に「millenium parade ✕ 中村佳穂」名義で出演も決まった。
明けて2022年元旦夜の東京はえらく冷え込んでいた。紅白に出演した佳穂ちゃんはその足で配信の収録現場に向かう。彼女が到着するまでの間、司会の三原勇希さん・imai君・CINRAの山元翔一さんと共に映像を観ながらいろんなトークをするのが今回の僕のお役目。楽しく時は過ぎて、いよいよ姫の到着。メイクも衣装もバッチリ決まった佳穂ちゃんの新曲弾き語りには、紅白の舞台を走り抜けた高揚感とオーラがあった。
終演後、久しぶりにゆっくり話せてよかった。歌っている時のアッパーなテンションとは打って変わって、ステージを降りた佳穂ちゃんはいつも礼儀正しくて、きっちりしっかりしている。人と人はずっと出会ったときの関係性が変わらず続くから、僕に対しては余計にそうなるのかもしれない。帰り際エレベーターまで見送ってくれた彼女に心の中でエールを送った。いい年明けだった。
というわけで、今年もよろしくお願いします。
Comentarios