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2022年5月17日(火)平凡な毎日もいつか お金では買えない小さな宝石の日々になる



2022年のゴールデンウイーク、コロナ禍以降初めて(マスク以外の)行動制限のない連休。


その初日4/29、今年初めてのソロワンマン「高野寛×宮川剛(ゲスト:おおはた雄一)」に向けて準備を進めていた矢先に、敬愛する小坂忠さんの訃報が届いた。




最初に忠さんとご一緒したのは、確か2001年のNHK hi-visionの番組「細野晴臣イエローマジックショウ」の収録だったと思う。僕は番組のハコバンのギタリストとして忠さんの「ほうろう」を共演して、忠さんのファーストアルバムタイトル曲「ありがとう」(細野さん作)を歌った。



2005年9月に開催された「ハイドパーク・ミュージック・フェスティバル2005」での共演も忘れられない。


会場の埼玉・稲荷山公園はアメリカ空軍のジョンソン基地跡地で、地元民から「ハイドパーク」と呼ばれた場所。ハイドパークの周辺にあった家屋、いわゆる「米軍ハウス」は後に民間に払い下げられて、60年後半~70年代の前半には細野晴臣さん、小坂忠さん、西岡恭蔵さん、吉田美奈子さんなどのミュージシャンやアーティストが移り住むようになった。そんなハイドパークに縁のあるミュージシャンを軸に、「Hydepark music fes」は開かれた。出演者は、細野晴臣、小坂忠、洪栄龍、ラスト・ショウ、鈴木慶一、佐野元春、センチメンタル・シティ・ロマンス、高野寛、森山良子、ブレッド&バター、麻田浩、エリック・アンダーソン、マーク・ベノ、SAKEROCK 他。大トリは、1973年にHydeparkの米軍ハウスで録音した初のソロアルバム「HOSONO HOUSE」を、久しぶりに再演する細野晴臣さんだった。




*参考(有料記事)


以来、何度となく忠さんと同じステージに立たせていただいた。完熟トリオ(小坂忠、中野督夫、鈴木茂)のサポートでFUJI ROCKに出演したり、忠さんが地元で毎年開催しているクリスマスコンサートにも、何度かゲストで呼んでいただいた。一緒に歌っていると、忠さんのファンキーな歌のフィーリングにシンクロして、自分も少し歌がうまくなったような気がした。楽屋ではいつもユーモアで緊張を和ませてくれた。観客として忠さんの歌を聴いて、何度涙したかわからない。感情よりも先に魂が揺さぶられるようで、歌が胸に刺さった。


数年前、忠さんはステージ4の癌の宣告を受け、10時間以上に渡る手術の後、奇跡的にステージにカムバックして、活動を続けてきた。病が完治していないことは伺っていたが、このままずっとずっと歌い続けてくれるんじゃないかと思っていた。それくらい、以前にも増して深みを増した歌声が凄かった。


5/7の忠さんの追悼告別式は、クリスマスコンサートで共演させてもらったことのある所沢ミューズホールで開かれた。「この歌で見送ってほしい」という忠さんの遺言から、2005年にTinPanと録音した「He Comes with the Glory」を参列したミュージシャン有志で歌った。2001年、忠さん53歳の頃の作品。まるでこの日のためにずっと準備していたかのような歌。


「He comes with the Glory」 作詞:小坂忠 作曲::細野晴臣&小坂忠 トランペットの響きが この街を包んだら 永久(とわ)の別れを告げる それは旅立ちの歌 これは俺の晴れ舞台 湿っぽくしないでくれ 住み慣れたこの街から 故郷へ帰るだけ He comes with the glory; He comes with the glorious kingdom この世では旅人でも 向こうには住まいがある 何も持たずに生まれて 裸で帰っていく 心残りがあるなら 君に会えなくなること 先に行って待ってるよ I hope that I will see you again He comes with the glory; He comes with the glorious kingdom



「湿っぽくしないでくれ」という忠さんの言葉どおり、追悼式には時々笑いが起こるような明るいムードもあって、忠さんがそこにいるようだった。いや、そこに忠さんだけがいないのだった。




忠さんは日本のR&Bシンガーの先駆者であり、80年代以降は牧師として、ゴスペルシンガーとしても活動してきた。病と闘いながら、最後の最後まで歌い続けた。


僕は信仰を持たないが、人の魂は生まれ変わると信じている。

だから、自分がいつかこの世を去ることを、若いときからずっとイメージしている。

でも、わかっていても別れは悲しいものだ。


ゴールデンウイークになるといつも歌う「相変わらずさ」という27年前の曲がある。

5/4のワンマンライブではこの曲を1曲めに歌った。


「時は流れゆく 平凡な毎日の中に 素晴らしい出会いや別れを 何気なく繰り返す」


5/2は忌野清志郎さんの命日。何曲かを、心のなかで忠さんと清志郎さんに捧げた。


「時は流れ行く 平凡な毎日もいつか お金では買えない 小さな宝石の日々になる」


いつまでも泣いてばかりはいられない。

音楽を続けよう、生きよう、最後まで歌おう、そう思った。




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